ミズヒキミノカサゴ(新称)

ダイバーの間ではとてもメジャーな魚にネッタイミノカサゴ(学名:Pterois antennata)という魚がいる。
これとよく似た魚にフリルフィン・ターキーフィッシュ(学名:Pterois mombasae)という種類がいるのだが、どうも日本ではこの2種を混同していたらしく、千葉以南の各地で採取されたネッタイミノカサゴとされる標本の中にかなりの確率でこれが混じっていたらしい。。。
このフリルフィン・ターキーフィッシュには当然、和名がないため(日本初記録という事)、新標準和名「ミズヒキミノカサゴ」が提唱された。

との論文が魚類学雑誌の2011年4月25日発行の最新号(Vol.58, No.1)に載っている。

ミズヒキミノカサゴ(新称)  Pterois mombasae

つまり、僕らがネッタイミノカサゴだと思っている魚の多くがミズヒキミノカサゴ(新称)という別種かもしれないというのだ。

また、この論文の中で国立科学博物館の魚類写真資料データベースにネッタイミノカサゴとして登録されている写真も調査した結果、次の写真などがフリルフィン・ターキーフィッシュだと同定された。

魚類写真資料データベース – KPM-NR0025926 http://bit.ly/jiGApl (紀伊半島・串本)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0063160 http://bit.ly/missuc (紀伊半島・みなべ)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0001425 http://bit.ly/kShMr5 (伊豆半島・大瀬崎)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0035565 http://bit.ly/mEHGY2 (伊豆大島)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0062458 http://bit.ly/ksrAg1 (伊豆大島)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0062459 http://bit.ly/mBjXLV (伊豆大島)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0062460 http://bit.ly/j7Iiku (伊豆大島)
魚類写真資料データベース – KPM-NR0082854 http://bit.ly/kF1qjl (千葉県・館山)

著者の鹿児島大学の学生さんによると、Googleなどでネッタイミノカサゴで画像検索して出てきた写真の中にも、かなりの確率でミズヒキミノカサゴ(新称)が混じっているとの事。

で、ネッタイミノカサゴとミズヒキミノカサゴ(新称)との形態上の違いとして以下のようなものがあるのだが。。。

・ 背鰭の棘の数が13本でやや短い[ネッタイミノカサゴは12本でやや長い]
・ 胸鰭条数が17–20(通常18 以上)でやや短い[ネッタイミノカサゴは16–18(通常17)でやや長い]
・ 眼径がやや大きい[ネッタイミノカサゴはやや小さい]

ミズヒキミノカサゴ(A)とネッタイミノカサゴ(B)の胸鰭
ミズヒキミノカサゴ(A)とネッタイミノカサゴ(B)の胸鰭
僕らダイバーが水中で識別する上で、一番分かりやすいのが胸鰭の模様だ。

ミズヒキミノカサゴ(新称)の胸鰭の膜の部分に6–24 個の斑点があり、糸状に伸びる部分に赤色から褐色の縞模様があるそうな。。。
[ネッタイミノカサゴは胸鰭の膜の部分に3–17 個の斑点があり、糸状に伸びる部分は一様に赤色または白色 ]
左写真はAがミズヒキミノカサゴ(新称)、Bがネッタイミノカサゴ。

多分、和名の「ミズヒキ」は、この赤白の縞模様を「水引」に例えているのだと思う。

う~ん。。。本当??(・・;)
これが正直な感想。(笑)
これぐらいの差異だと個体差ってことはないのだろうか。。。?(^。^;)
変異の範囲内という気がしなくもないのだけど。。。

実際、2003年に行ったKochzius氏らによるDNA解析によると、Pterois antennata(ネッタイミノカサゴ)とPterois mombasae(ミズヒキミノカサゴ)の遺伝的差異は非常に小さく、他種の種内変異レベルしかないとしている。(もちろん、解析に用いた標本を誤同定している可能性もある)

これから僕がやりたいのは、ネッタイミノカサゴとミズヒキミノカサゴ(新称)が実際の水中で本当に繁殖隔離しているのか調べる事。
2種が日常的に交雑していたら、また話は違ってくるような気がする。。。(笑)

ちなみにこのミズヒキミノカサゴ(新称)は沖縄本島周辺、屋久島、四国、紀伊半島、伊豆半島、房総半島から記録されており、その後出された論文によると、この魚の分布は黒潮の影響を強く受けているのでは?という事が指摘されている。(下の参考にある2の論文を参照)
実際、今のところ奄美諸島や八重山諸島からの記録はない。

参考:

1. ミズヒキミノカサゴの日本初記録に関する論文
松沼瑞樹・本村浩之. 2011. ミノカサゴ亜科魚類ミズヒキミノカサゴ(新称) Pterois mombasae の日本からの初記録および近縁種 ネッタイミノカサゴP. antennata との形態比較. 魚類学雑誌, 58(1): 27-40
2011年4月25日発行

2. ミズヒキミノカサゴとネッタイミノカサゴの分布状況に関する論文
松沼瑞樹・藍澤正宏・桜井 雄・本村浩之. 2011. ミズヒキミノカサゴ Pterois mombasae(フサカサゴ科)の屋久島からの記録および国内におけるミズヒキミノカサゴとネッタイミノカサゴ P. antennata の分布状況. Nature of Kagoshima Vol. 37, Mar. 2011
2011年5月16日発行

Fish Base:
ミズヒキミノカサゴ(新称) Pterois mombasae, Frillfin turkeyfish : fisheries http://bit.ly/iJu9ll
ネッタイミノカサゴ Pterois antennata, Broadbarred firefish : fisheries, aquarium http://bit.ly/irjTOu

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