シロオビイソハゼ(新種)とコジカイソハゼ(新称)

生物の名前には和名と学名があって、よく勘違いされる事なんだけど、和名は決して学名に対してつけられるものではない。
和名も学名同様にその実体に対してつけられるものなのだ。
だから当然、和名がつけられた際に基になった標本と、その種が新種として記載された際に基になった標本とが、実はまったく別の種類だった!!な~んて事は、結構頻繁に起こる。
人間には間違いがあって当然だし、そもそも「科学」とはそういうものだ。
しかし、基本的に普段和名にしか親しんでおらず、研究者の言う事は絶対(真理)だと思っている僕ら一般市民からみると、こんな面白い事が起こる。

シロオビイソハゼ / 屋久島
シロオビイソハゼ / 屋久島
「シロオビイソハゼ」というハゼがいる。
日本では沖縄の島々や屋久島などで見られ、僕の知る限りでは屋久島が最北限になるイソハゼの仲間だ。
ホバーリングする、お腹に白い線が入った綺麗なイソハゼなのだが、2003年に西表島の標本を基に既知種(Larsonさんという人によって新種記載されたのは1976年)のEviota pellucidaだと同定され、その時に日本初記録という事で標準和名「シロオビイソハゼ」が提唱された。
しかし、これがどうも間違いだったようで、「シロオビイソハゼ」はEviota pellucidaではない事が分かったのだ。
精査の結果「シロオビイソハゼ」は該当する既知種がいないので、今回、Eviota atriventrisという新種として記載された。

標準和名: シロオビイソハゼ
学名: Eviota atriventris (新種)

「シロオビイソハゼ」はハゼ好きのダイバーの間ではそれなりに知られているハゼなので、今さら新種と言われても困るかもしれないが、間違いなくこれは”新種”なのだ。(笑)
”新種”というとニュースになる事も多いし、一般の市民の中には”新種”というと何やらこれまで知られていなかった生物が森の奥地から見つかった!!!という感覚を持っている方が多いかもしれないけど、こういう形で新種は机の上で生まれる。
と。。。話はここで終わらない。。。面白いのはここから。(^^;

で、これとは別に、ハゼ好きダイバーの間でバイブルになっている「日本のハゼ」のP144に載っている「イソハゼ属の1種-4」というイソハゼの仲間がいる。
屋久島や奄美大島、沖縄の島々ではごくごく普通に見られる赤いイソハゼの仲間で、これも僕の知る限りでは屋久島が最北限になると思うのだが、これが何者なのか分からないままだった。
当然、新種(未記載種)の可能性もあったのだが、これが今回、同時に奄美大島の個体を基に何者なのか分かったようだ。

コジカイソハゼ / 屋久島
コジカイソハゼ / 屋久島
コジカイソハゼ / 屋久島
コジカイソハゼ / 屋久島

それが何と、Eviota pellucidaだったのだ!!
Eviota pellucidaは、先ほど説明した、これまで間違えてシロオビイソハゼだと思われていた種類だ。。。(笑)

大丈夫??話についてきてくれてる???(^_^;)

という事で今度こそ、これがEviota pellucidaの日本初記録になるわけだ。
そして同時に「コジカイソハゼ」という標準和名がつけられた。

標準和名: コジカイソハゼ(新称)
学名: Eviota pellucida

でも、これは当然、新種ではない。
Eviota pellucidaは既知種なので、日本初記録になるのだ。

和名もすでにあって、これまでよく知られていたイソハゼが”新種”になり、もしかしたら新種かも?とされていた和名のない謎のイソハゼが”既知種”だったというオチだ。(笑)
和名も学名もあったハゼが新種で、和名も学名もなかったハゼが新種じゃない不思議。。。(笑)
分類は学名を介さないと理解しにくい事がかなり多い。。。(^_^;)

記載論文: Eviota atriventris, a New Goby Previously Misidentified as Eviota pellucida Larson (Teleostei: Gobiidae)

アマノガワクラカケトラギス(新称)

クラカケトラギス(Parapercis sexfasciata (Temminck & Schlegel,
1843))には色彩に2型があることが知られていたのだが、高知県で採取された2型の標本を元に分子系統解析を行ったところ遺伝的には種レベルの分化が認められたため、昨年、一方が新種記載された。

Parapercis lutevittata Liao, Cheng & Shao, 2011

ところがまだ和名がなかったのだが、鹿児島県志布志沖で採取された5個体を元に最近、新標準和名が提唱されたようだ。

アマノガワクラカケトラギス ( 新称 )
Parapercis lutevittata Liao, Cheng & Shao, 2011

アマノガワクラカケトラギス
アマノガワクラカケトラギス
クラカケトラギスとアマノガワクラカケトラギスの違いは以下の通り。

アマノガワクラカケトラギスは
・胸鰭基底に沿って小黒色点が並ぶ(クラカケは胸鰭基底付近に大きな黒色斑をもつ)
・背鰭始部から胸鰭基部まで伸びる1黒色横帯と体側のV字型黒色斑との間に小黒色点が散在(クラカケは小黒色点がない)
・背鰭の鰭膜基部の黒色斑がない(クラカケは黒色斑がある)

何だかよく分からないけど(笑)、写真の標本写真で確認してください。。。
記載論文は以下の通りです。。。

鹿児島県志布志沖から得られたアマノガワクラカケトラギス(新称) Parapercis lutevittata(ワニギス亜目:トラギス科)の記録

何か気合の入っていないメチャ淡々とした情報提供でしょ?(^^;
なぜかって??
だって屋久島ではクラカケトラギス自体を見たことがないんだもん!!!(笑)

温帯域のダイバーの皆さん、クラカケトラギスを要チェックです。(#^.^#)

あけまして、おめでとうございます

あけまして、おめでとうございます。 屋久島に店を構えて9年目。。。 今年はようやく念願だった新店舗をOPENさせ、心機一転、新たな気持でスタートし直そうと思っています。 本年もよろしくお願いいたします。 辰年の今年、よう… 続きを読む »

サクヤヒメジ(新称)

「ヒメジ科のヨメヒメジの中にヒゲの白い子が混じってない?」
数年前から鹿児島大学総合研究博物館の本村さんに聞かれていたのだが、この白いヒゲを持つヨメヒメジ似の子がついに新種記載され、標準和名も提唱された。

標準和名: サクヤヒメジ(新称)
学名: Upeneus itoui

記載論文:
Yamashita, M., D. Golani and H. Motomura. 2011. A new species of Upeneus (Perciformes: Mullidae) from southern Japan. Zootaxa, 3107: 47-58.

本村さんによると標準和名はサクヤヒメジが多く生息する笠沙の地名に縁のある日本神話の女神、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)を語源としているそうだ。
美しい命名だ。。。(笑)

ヨメヒメジの群れに1匹サクヤヒメジ (photo by T. Hirata)
ヨメヒメジの群れに1匹サクヤヒメジ (photo by T. Hirata)
このヒメジは鹿児島県の笠沙沖を中心に宮崎県や沖縄県の水深40m以浅から採集された67個体の標本に基づいて記載されたもので、現在のところ日本固有種。
僕らが潜る浅い水域に生息しており、ヨメヒメジによく似ている事から、僕らダイバーは2種(ヨメヒメジとサクヤヒメジ)を混同している可能性が強い。
左写真は真ん中の1個体のみがサクヤヒメジで、あとはすべてヨメヒメジ。

水中で見た時、全体的に雰囲気はよく似ているけれど、体の各所の模様を見ればまったく違うヒメジなので、意識してみれば識別は可能だと思う。
ヒゲの色(ヨメヒメジ⇒黄色、サクヤヒメジ⇒白色)もそうだけど、2枚の背ビレの斑紋(ヨメヒメジ⇒先端付近に黒い斑紋、サクヤヒメジ⇒先端付近に黒い斑紋はない)や尾ビレの斑紋(ヨメヒメジ⇒上も下も白黒の縞々、サクヤヒメジ⇒上は白黒の縞々だが下は真ん中が茶色く塗りつぶされる)など、よく見ればまったく違うヒメジだ。

かなり前から屋久島でも探しているのだけど、見つからない。
鹿児島本土と沖縄でも見つかっているので、屋久島にもいると思うのだけど。。。
和名はついたけど、引き続き「白いヒゲを持つヨメヒメジ」探しは続く。。。(^^;;

サクヤヒメジ (photos by J. Shibata)
サクヤヒメジ (photos by J. Shibata)
サクヤヒメジ (photos by J. Shibata)
サクヤヒメジ (photos by J. Shibata)