標準和名の傑作「ネジリンボウ」 – シリーズ「和名考」その2

今回はねよし(富戸の波)さんのコメントになります。
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neyoshi_base_bigger.jpgねよし – 富戸の波 (2010/03/23)
和名の問題は、僕なりにこだわっている事なので、真面目に述べさせて頂きます。
 >> どんな和名をつけても「その魚自身以外の意味を帯びてしまう」のでは
 >> ないでしょうか?
nejirimbou.jpgそうでしょうか。僕が標準和名の傑作と考えるのは「ネジリンボウ」です。短い名前でありながら愉快で日本語の軽(かろ)みに溢れています。初心者のダイバーでも、実際のネジリンボウを見てこの名前を教えて貰ったら二度と忘れる事はないでしょう。また、その名前を聞いたら直ぐにあのネジネジ模様を思い出すのではないでしょうか。それらは、全て、「その魚自身の模様」と言う意味だけを短く楽しい言葉で切り取ったからです。
仮に、ネジリンボウが富戸に沢山生息している名物種であり、そこで採取された個体にちなんで「フトハゼ」と命名されていたとしたら、ここまでこの名は定着していなかったでしょう。また、その名前を聞いても初心者の方は直ぐには思い出せないのではないでしょうか。
更に、100年後だってネジリンボウは「ネジリンボウ」の名そのままの体でしょうが、その頃には環境が変わってもはや富戸には生息しておらず富戸名物ではなくなっているかも知れません。「フトハゼ」と名付けていたら、
  「なんでこんな名前なんだ?」
とその頃の人は訝しく思っているでしょう。標準和名にも時代に耐える安定性があった方がよいと思うので、やはり魚自身の意味だけを負った「ネジリンボウ」が一番と考える次第です。
hirenaganejirin.jpgさて、ネジリンボウ属はその後、近似種の記載により「ヒレナガネジリンボウ」、「キツネメネジリンボウ」と仲間を増やしました。どちらも「外見」と言うその魚自身の意味によっており、僕は妥当な命名だと思います。但し、ただの「ネジリンボウ」よりも長い名前になってしまったのが難点です。もし、ヒレナガネジリンボウも2種の近似種に分れるとすると、例えば
 アカヒレナガネジリンボウ
 クロヒレナガネジリンボウ
と更に長くなってしまいます。しかし、これは二次的な問題です。
 >> 特に地名や人名よりも、その魚の特徴を和名に充ててしまうのが一番
 >> 危ない
 >> その魚自身とはまったく関係のない言葉、例えば人名や地名がむしろ
 >> 一番安全なのではないでしょうか?
「危ない」「安全」と言う意味がよく分らないのですが、何だか標準和名の「記号化」或いは「数値化」を推奨していると言う風にも聞こえます。学名ならば「記号」や「数値」でよいのです。つまらないけれども必要悪として僕も理解できます。でも魚の標準和名は、「日本語」の「名前」なのです。携帯電話の型番とは全く違うのです。日本語の美しさ、楽しさや面白さ、そして長い歴史を反映したものであって欲しいと願う次第です。
ちなみに、「ネジリンボウ」を素晴らしい和名と僕が高く賞賛する背景にはこんな事もあります。
聴覚障害のダイバーの方を海に案内しようと、手話の出来るガイドさんがブリーフィングをなさっているのを富戸で拝見した事があります。その時は、砂地のあちこちにネジリンボウが現れている季節でした。そこで、そのガイドさんは手ぬぐいを絞る仕草をして
 「ネジリンボウ」
と説明なさっていました。
 「なるほどなぁ~!」
と僕は感心してしまいました。そんな手話が正式にある筈はないのですが、何と分かり易いのでしょう。健聴者の我々だって二度と忘れません。これが「フトハゼ」であったら、とっても面倒な手話になっていた事でしょう。
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次回はこのねよし(富戸の波)さんのコメントに対する僕(HARAZAKI.NET)のコメントになります。

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1件のコメント

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