「生物多様性」という言葉 その1

年2010年は「生物多様性条約第10回目締約国会議(COP10)」が愛知県名古屋市で開催される。
また2010年は国連の定めた「国際生物多様性年」という事もあってか、最近はいたるところで「生物多様性」という言葉が使われているのを目にするようになってきた。
しかし、何でもかんでも「生物多様性」と言ってしまっている印象を受け、これには何か違和感を感じる。
これまでも普通に行われてきたような環境保全に関する取り組みも、最近はすべて「生物多様性の保全」という言葉で置き換えられているような気がする。
「生物多様性」には広い意味があるので、何でもかんでも「生物多様性」と言ってしまっても、それ自体は間違いではないのだが、この言葉をあまりにも便利に使い過ぎてはいまいか?
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境省は生物の多様性を維持するために様々な取り組みを行ってきているのだが、そのひとつに「生物多様性保全推進支援事業」というのがある。
地域の自然環境の保全・再生に関する活動等を金銭的に支援する事業だ。
この二次募集に屋久島の”ヤクタネゴヨウ調査隊”が応募した「屋久島生物多様性保全再生事業」が採択された。
(”ヤクタネゴヨウ調査隊”は絶滅危惧種に指定されているヤクタネゴヨウを絶滅の危機から救うために様々な取り組みをしている自然保護団体)
これを受けて、屋久島に「屋久島生物多様性保全協議会」なる会が発足したのだが、この事業内容は次の通りだ。

「鹿児島県屋久島町の屋久島(世界自然遺産)において、ヤクタネゴヨウやヤクシマリンドウ、ヤクシマウスユキソウなどの希少種の自生地調査を実施するとともに、ヤクシカの防護柵を設置することなどにより、本来の森林植生の復元を図る。」

。。。んっ??
これって本当に屋久島の”生物多様性”を保全するん???
普通に森林生態系のみを保全する事業なのでは?(-_-;)
従来の森林生態系保全活動と何が違うん!!
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林内の稀少種の自生地調査やヤクシカの防護柵を設置したりして森林植生の復元を図る事は、生物多様性を維持するためにはとても重要で必要な事のひとつだとは思うが、特に「生物多様性」という言葉を使う必要はない気がする。
正確には”屋久島の生物多様性を維持するために必要ないくつかの取り組みの中のひとつ”なのだから、事業名は「屋久島森林生態系保全再生事業」で、会の名称は「屋久島森林生態系保全再生協議会」で良いのではないだろうか。。。?(^^;;
仮に僕が屋久島の海環境を保全・再生するための試み、例えば一湊タンク下のオオハナガタサンゴの保全とかかつてコブシメの大産卵地だった志戸子の産卵場再生に資金が必要だと考え、この「生物多様性保全推進支援事業」に応募したとする。(三次募集はないかもしれないけど。。。(笑))
見事に採択された場合、その事業名を「屋久島”生物多様性保全再生”事業」というだろうか?
いやいや、絶対に言わない。
あくまでも”生物多様性保全再生”事業のひとつであり、これが目標ではあるけれど、その事業内容から「一湊オオハナガタサンゴ群落保全事業」とか「屋久島コブシメ保護事業」とでも言うのが妥当だろう。
本来なら、森、川、海の各環境に生息する生き物たちの「つながり」を重視した包括的な保全、再生事業を行うとき、その事業がまさしく「屋久島”生物多様性保全再生”事業」となるのだ。
なぜわざわざ「生物多様性」という言葉を使うのだろうか?
環境省は”生物多様性”という言葉を安易に使い過ぎてはいないだろうか?
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は生物多様性というのは生きとし生けるものすべての「つながり」を言うのだという認識がある。
だから、「”屋久島生物多様性保全再生”事業」というからには川や海の生態系を含めたものでなければならないし、その”つながり”を維持するためのものでなければならないと考えている。
実際この事業の内容を知るまではそういう事業だと思っていた。
従来のような個々の種や特定の環境のみに絞った保全活動はその種や環境の保全にはなっても、「生物多様性」の保全にはならないし、最悪、多様性維持の妨げになる可能性だってある。
なぜならすべての生き物や環境はつながっていて、それらが微妙なバランスを保ちながら多様性を維持しているので、この「つながり」を無視すると多様性のバランスは間違いなく崩れる。
「生物多様性」の概念は生命の豊かさを包括的に表した広い意味合いがあり、それを維持するためには一部の生態系や種のみならず、地球上すべての生態系や様々な環境に生息する種を横断的に捉える視点が必要だ。
特に「つながり」という言葉は生物の多様性を維持する最重要キーワードで、この「つながり」を守る・考慮する施策こそが「生物多様性」の保全・再生につながる。
「つながり」こそが「生物多様性」という問題の一番大事な部分なのだ。

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5件のコメント

  1. 原崎さん
    来週YOCA(屋久島まるごと保全協会)の定例会があります。その熱い思い、ぶつけてみませんか?原崎さんがYOCA会員になってくれたら、原崎さんがおっしゃったことが、もっともっと実現に向けて動き出せると思います!
    「つながり」こそが「生物多様性」という問題の一番大事な部分・・・同感です。
    でも、屋久島において水域を知らない人たちは
    何をどうして良いかわからない・・が本音だと思います。でも、YOCAや屋久島生物多様性協議会メンバーは「つながり」の意味を決してうわべだけでなく、深く深く理解している、自然と本気で向き合い、かつ行動している人たちですヨ。 世の中には口先だけの理想論を声高に叫ぶ方々がたくさんいらっしゃいますが、「現場」で「行動している」ってところが味噌デス。みんな、現場に足繁く通うフィールドワーカーです。とっても尊敬しています。勿論、原崎さんのことも、ですが。(*^^*)

  2. あ~この文は「屋久島生物多様性保全協議会」に参加している方たちを批判しているワケではないですよぉ~!(^^)
    あくまでもこの森林保全事業に「生物多様性」という言葉を当てはめる必要はないと思っただけです。
    この「屋久島生物多様性保全協議会」は屋久島まるごと保全協会(YOCA)、ヤクタネゴヨウ調査隊、屋久島町、屋久島環境文化財団の4団体で構成されているそうですが、海に関わっている、水辺環境に熟知した団体は含まれていませんよね。。。?(-。~;)
    また事業計画書には、以下の5つの課題が記載されているそうですが、特に水辺環境に関する課題はひとつもないですよね?(笑)
    * 絶滅危惧種の現状を正確に把握する。
    * ヤクシカによる森林植生への被害の拡大に対し、適正な保護管理手法の確立。
    * 人工林を本来の森林植生に再生する。
    * 大陸飛来の大気汚染物質による生態系への影響を注視する。
    * 民・学・官の協働と連携をより充実させる。
    それから総合的に検討する専門家会議を設立するそうですが、これに半分の割合で海や川の研究者は含まれていますか?
    森林環境ばかりが注目を浴びる屋久島だから、仕方がないのかな。。。とも思いますが。。。(-_-;)
    ところでYOCA(屋久島まるごと保全協会)って何ですか。。。?

  3. >あ~この文は「屋久島生物多様性保全協議会」に参加している方たちを批判しているワケではないですよぉ~!(^^)
    うんうん。そうは思ったのですが、フォローせずにはいられませんでした(^^ゞ
    >それから総合的に検討する専門家会議を設立するそうですが、これに半分の割合で海や川の研究者は含まれていますか?
    すでに設立されました。
    そして海川の研究者はまだ入っていません。
    そのことについてはすでに会長に提案しています。でも、まだ模索しているところなのです・・
    原崎さんの力を貸して下さい!
    >森林環境ばかりが注目を浴びる屋久島だから、仕方がないのかな。。。とも思いますが。。。(-_-;)
    それもあります。
    あと、会のメンバーに海川の人間がいないことも要因です。
    だからこそ、去年から参加した私の立ち位置は責任を感じますし、一人でも多くのフィールドワーカーに参加してほしいのですっ!
    >ところでYOCA(屋久島まるごと保全協会)って何ですか。。。?
    団体名の通りデス(*^^*)
    詳しくは12/8の夜7時からのYOCA定例会(宮之浦にて)にぜひ!

  4. > そして海川の研究者はまだ入っていません。
    えっ?1人も??(-。~;)
    「”総合的に検討する”専門家会議」なのに?
    ぜんぜん総合的に検討する環境が整ってないね。(笑)
    > あと、会のメンバーに海川の人間がいないことも要因です。
    マジっすか。。。(-_-;)
    やっぱり、「屋久島森林生態系保全再生協議会」だったか。。。(笑)
    > 一人でも多くのフィールドワーカーに参加してほしいのですっ!
    メンバー内に”半分”は海川に関わる人間が欲しいね。。。
    1-2人ではダメだろうね。
    メンバーが30人いるのなら15人は欲しい。
    「屋久島生物多様性保全協議会」(?)は屋久島まるごと保全協会(YOCA)、ヤクタネゴヨウ調査隊、屋久島町、屋久島環境文化財団の4団体で構成されているそうだけど、これに団体として加わることはできないかな?
    個人ではなくて、例えば「屋久島海洋生物研究会」のような団体として(新規に立ち上げてもいい)この協議会に加わる必要があると思います。
    そして「屋久島生物多様性保全協議会」は、(今のメンバーのような)森しか知らない人間とか、(僕らを含む)海しか知らない人間を束ね、総合的な施策を検討、論議、実施する協議会であって欲しいです。

  5. >「屋久島生物多様性保全協議会」に個人ではなくて、例えば「屋久島海洋生物研究会」のような団体として(新規に立ち上げてもいい)この協議会に加わる必要があると思います。
    大賛成デス!
    屋久島海洋生物研究会は機能していませんから、ぜひ新規に立ち上げましょう!!
    >そして「屋久島生物多様性保全協議会」は、(今のメンバーのような)森しか知らない人間とか、(僕らを含む)海しか知らない人間を束ね、総合的な施策を検討、論議、実施する協議会であって欲しいです。
    私も全く同感デス!
    では明日、YOCAで同席して下さ~い♪

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